部分的に痩せたいと思っている人は非常に多いと思います。
下腹についた脂肪だけ落としたいとかふくらはぎだけ細くしたいとか胸だけ残して痩せたいとか下半身だけとか上半身だけとかですね。
世の中には部分痩せに効果的といわれるエクササイズやダイエット法も多数存在しています。
しかし、こうしたことは本当に可能なのでしょうか?そんなことが気になったので少し調べてみました。
運動によって脂肪はどのように分解されるか
運動によって脂肪が分解される仕組みはこんな感じです。
運動を行うとアドレナリン、ノルアドレナリンなどのホルモンが分泌され、脂肪細胞の膜に作用して脂肪を分解する酵素であるリパーゼと脂肪が接触可能な状態にします。
リパーゼは脂肪細胞中の脂肪を分解してその結果生じた有利脂肪酸が血中に放出されます。
有酸素運動では筋肉はこの脂肪酸を内部に取り込んでエネルギー源として使用します。
このモデルが正しいとすれば運動による刺激はアドレナリンを分泌させる引き金になるだけで、その運動で使われた筋肉の周辺の脂肪が分解されるとは限りません。
脂肪を使うのがその筋肉であっても脂肪の供給源は全然別の部位でもよいことになります。
ただ実際の脂肪分解の仕組みはもっと複雑で、筋肉が脂肪の分解を促進する物質を直接に分泌することもあるようなので、そうすると部分痩せも不可能ではないということになります。
(運動と脂肪代謝 井澤鉄也 より)
全身運動と部分運動で痩せ方は違うか
部分痩せが実際に可能かどうかを調べるには全身運動をした人と体の一部だけを使った運動をした人の痩せ方を比べたり一部だけの運動でどこの脂肪が減ったかを調べればいいわけですが、実際にそういった実験を行った人がいるそうなので紹介したいと思います。
腹脂肪実験
イギリスのメディアグループBBC(英国放送協会)がオックスフォード大学の教授とバース大学の教授の力を借りて行った実験です。
35名の協力者を次の5つのグループに分け実験を行います。
- ダイエット(食事制限)グループ
- 運動量を増やすグループ
- 牛乳をたくさん飲むグループ注1
- クランチ(腹筋運動)を行うグループ
で結果がどうなったかといいますと、
グループ | 結果 |
---|---|
食事 | 体重が平均3.7kg減り腹囲も5cm減った。筋肉も減った。 |
運動 | 体重が1kg減った。内臓脂肪に変化は見られなかった。 |
牛乳 | 体重は変わらなかったが脂肪が増えた(体脂肪率が上がった)。 |
腹筋 | 平均して2cmウエストが減った。ウエスト周りの脂肪の量に変化は見られなかったので筋肉が引き締まったことが原因とみられる(?)。 |
一応腹筋を行っていたグループでもウエストの減少は見られたもののその幅は食事制限グループより小さくお腹周りの脂肪の状態にも変化は見られなかったという結果でした。
英語がまったくアレなので間違ってたらすみません。詳しくは原文をみてください(→How can I get rid of belly fat?)
筋持久レジスタンストレーニングが部分的な脂肪に与える変化
Regional fat changes induced by localized muscle endurance resistance training.
これは部分的な運動が局所的な脂肪に与える影響を調べた実験です。
7人の男性と4人の女性に12週(週に3回)、10-30%の軽い負荷をかけたレッグプレスを960-1200レップスやって貰ったところ、全身レベルでは体重、体脂肪率などは大きく変化しなかったが、体脂肪量は5.1%減少した。
しかし、脂肪が減少した場所を調べてみると、それは運動を行った脚ではなく腕や上体で顕著であった。
結論としてこのトレーニングプログラムは脂肪を減らすのに効果的だったがそれは動かした部位とか関係ない場所で起きた。
みたいな感じだと思います。つまり脚の運動を行ったけど脚じゃなくて上体が痩せたよって話ですね。
腹筋運動の腹の脂肪に対する影響
The Effect of Abdominal Exercise on Abdominal Fat
今度は腹部のエクササイズが腹部の脂肪にどんな影響を与えるかを調べたものです。
18〜40歳の健常者(男性14人、女性10人)を腹部運動を行うグループとなにもしないグループに分け、同じカロリーの食事を摂らせるようにして6週間後に測定したところ体重、体脂肪率、腹囲に有意な差は見られなかったが、腹筋を行ったグループでは筋持久力の上昇がみられた。
みたいな感じだと思います。脂肪などは変わらなかったけど筋力はついたという話なはずです。
現実的に部分痩せは厳しい
以上から考えまして特定の部位を動かしたからといってその部位だけ目に見えるレベルで脂肪が減少するとは限らないと思われます。
つまり部分痩せはかなり難しいということになります。
となると以下の行為はあまり意味がないということになってしまいます。
- お腹の脂肪を減らしたくてシットアップやクランチをする
- 腰周りの脂肪を落としたくてカーヴィーダンスを行う
- お尻や太もも痩せしたくてスクワットや足パカを行う
- 胸を残して痩せるために胸部を動かさないようにする
- 二の腕痩せのために腕のダンベル運動を行う
- 顔痩せしたくて顔の筋肉を動かす
- 痩せたいと思っている部位のマッサージを行う
これらのことを行って実際のその部位が痩せることはあると思いますが、それは偶然と考えた方がいいでしょう。
運動を行えば脂肪は落ちます。しかし、どこの脂肪が落ちるかは分からないのです。
でも脂肪は全身に均等に分配されるわけではないので部分太りはあります(笑)。下腹、太ももなど脂肪がつきやすい部位ってありますよね。
こうした脂肪の分布は遺伝や性差によってきまる部分が多いといわれています。注2
ダイエットをして痩せていけば順番は不明ですが、目的の部位の脂肪もいつか減少するはずなので、部分痩せを目的とする場合でも消費カロリーが大きく脂肪燃焼効果の高いジョギングなどの有酸素運動をやるのがよいのではないかと思います。
後、最終手段ですが、脂肪吸引という手もあることにはあります。
注1ちょっと意味不明ですがそういうダイエット法があるそうです。プロテインダイエットみたいなものですかね。1日当たり1リットルのミルクを3回に分けて飲むとのこと。
注2Meta-analysis identifies 13 new loci associated with waist-hip ratio and reveals sexual dimorphism in the genetic basis of fat distribution