脂肪を燃焼し体重を減らす効果なら有酸素運動が有利
基本的に消費エネルギーが摂取エネルギーを上回れば体重は減っていきます。
運動は消費エネルギーを増やす手段としてダイエットで使用されますが、筋トレと有酸素運動ではどちらの方が多くエネルギーを使うことができるでしょうか。
運動の消費エネルギーは体重、時間、運動強度でだいたい決まります。
身体活動のメッツ表によれば運動の強度を表すメッツ値はサーキットトレーニング(きつめ)が8.0、ウエイトトレーニング全般が6.0、ウォーキング時速6.4kmが5.0、ジョギング時速9.7kmが9.8、縄跳び(ほどほどのペース)が11.8、水泳(クロール、ふつうの速さ)が8.3となっています。
これをもとに体重60kgの人が6分間で消費できるカロリーを計算するとこんな感じになります。
このように消費エネルギーの面から見て筋トレが有利ということはなさそうです。
また筋トレは普通長時間持続することができません。例えば30分間ジョギングすることはできても30分間スクワットし続けるなんてことは無理ですよね。
なので実際の稼働時間が少なくなる分、更に消費エネルギーは減っていくことになります。
また大きな力を発揮する運動では糖が主なエネルギーとなり脂肪がエネルギーとして燃焼されないという問題もあります。
有酸素運動と筋トレの併用で筋肉量の減少を食い止められる
ダイエット中に筋トレを行っても基本的に筋肉量が増えることはありません。
しかし、筋トレと有酸素運動の両方を行うことで、体重減による筋肉量の低下をある程度防ぐことはできるとされています。
例えば、19-48歳の肥満気味な男女を、①食事制限と筋力トレーニング、②食事制限と有酸素運動、③食事制限のみのグループに分けて8週間ダイエットを行わせた実験では食事制限のみがもっとも除脂肪体重(脂肪を除いた骨、筋肉、内臓などの重さ)の減少が激しく、次いで②のグループとなっており、①のグループでも減少がみられますが、その程度は一番ましとなっています。
(Effects of strength or aerobic training on body composition, resting metabolic rate, and peak oxygen consumption in obese dieting subjectsより制作)
つまり筋トレを行いながら痩せることで筋肉の減少量を減らし、体脂肪率を下げることができる可能性があります。
しかしそれが基礎代謝に与える影響はそれほど大きくない
ダイエット中に筋トレを行うべき理由としてしばしば「筋肉がつけば基礎代謝が上がって痩せやすい体質になりリバウンドも防げる」といったことが挙げられています。
しかしこれは本当でしょうか?
筋肉が基礎代謝に占める割合は全体の20%程度といわれており、1kg当たりでみていきますと脳は240kcal、心臓と腎臓は440kcal、骨格筋は13kcal、脂肪組織は4.5kcalのエネルギーを1日に消費するとされています注1。
つまり筋肉が1kg減っても失われる代謝は13kcalとなります。
脂肪のみが減っても4.5kcalは減るので得した分(?)は8.5kcalといってもよいかもしれません。筋肉と脂肪が同じ割合で減少した場合と脂肪が減少した場合を比べてみるとこんな感じになります。
体重 | 1:1の割合で減少 | 脂肪のみ減少 | 差 |
---|---|---|---|
-1kg | -8.75kcal | -4.5kcal | 4.25kcal |
-2kg | -17.5kcal | -9kcal | 8.5kcal |
-3kg | -26.25kcal | -13.5kcal | 12.75kcal |
-4kg | -35kcal | -18kcal | 17kcal |
-5kg | -43.75kcal | -22.5kcal | 21.25kcal |
どうでしょうか。人の基礎代謝は1200~1500kcalぐらいですし、かなり大幅に痩せたときを除いて筋肉量の減少防止による基礎代謝低下防止の効果を体感することは難しいのではないでしょうか。
脂肪より筋肉の方が代謝の向上に寄与するのは確かのようですが、喧伝されているほどその効果が大きいかは疑問です。
まとめ
まとめるとこんな感じになります、
- 体重を減らすには有酸素運動の方が使える
- 筋トレと有酸素運動を併用すると筋肉量の低下を緩やかにできる
- 筋肉量の低下による基礎代謝量の低下はそれほど気にしなくてもいい
というわけでただ体重を減らして細い体になりたいだけなら別に筋トレはやる必要はないということになります。
しかし体脂肪率が低く、引き締まったボディーを造りたいなら有酸素運動に加え筋トレを行うとよいでしょう。