先日、ノースカロライナ大学の研究者らが皮膚に貼るだけでダイエットができるスキンパッチの開発に成功したと発表し、日本でもニュースになりました。

脂肪を溶かす貼り薬、米研究者らがマウス実験で開発 人に応用可の期待 AFP通信

読んでみると脂肪を溶かすというか白色脂肪細胞を褐色脂肪細胞に変えるというものらしく、スキンパッチに非常に細かい針がついており、そこからロシグリタゾンなどの有効成分が直接脂肪細胞に浸透していく仕組みといいます。

スキンパッチが白色脂肪を褐色脂肪に変える様子
Locally Induced Adipose Tissue Browning by Microneedle Patch for Obesity Treatment

そもそも褐色脂肪とは?

脂肪細胞には白色脂肪細胞(White adipose tissue)と褐色脂肪細胞(Brown adipose tissue)の2種類があります。

この二つの脂肪細胞はなにが違うのかというと、

  • ミトコンドリアの多さ
  • 脂肪を蓄えておく場所である油滴の構造

が主な違いです。
白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞の違い
私たちが普通脂肪と呼んでいるものは普通白色脂肪を指します。
白色脂肪細胞の主な役割は脂肪を貯蔵することであり、褐色脂肪細胞と比べて油滴が大きく大量の脂肪を貯めておけるようになっています。

対して褐色脂肪細胞はあまり多く脂肪を蓄えておけないのですが、ミトコンドリアが多く、大量の熱を生産することができます。
人間では生まれたばかりの赤ん坊には比較的豊富に存在するものの年をとる毎に減っていき、成人では僅か40gほどしかないといわれているため、その影響もあまり大きくはありません。

しかし、冬眠を行う熊などの動物には褐色脂肪細胞が大量に存在していて冬眠中の熱生産に重要な役割を果たしているといわれています。

つまり褐色脂肪は脂肪組織でありながら熱を大量の生産できる組織ということになります。
なので褐色脂肪細胞が増えれば脂肪を燃焼しやすくなりダイエットにもいいんじゃない?と一部でいわれていました。

褐色脂肪は増やせる?

褐色脂肪細胞は基本的に自分の努力で増えるようなものではありません。
しかし、PPAR作用薬を使えば少なくともマウスにおいて褐色脂肪細胞を白色脂肪細胞に変えることが報告されています注1

今回発表された薬もロシグリタゾン注2など同様の作用をする薬を使ったもののようですが、飲み薬や注射ではなく、ナノテクノロジーを駆使することによってパッチに貼っても痛みを感じることのない微細な針をはやし、そこからナノ化した薬を白色脂肪細胞に直接届けることに成功したのが新しい点です。

これにより成分が全身に行きわたるのではなく細胞内に留まらせることができるとされ、パッチを貼ったことによりマウスの酸素使用量が20%増え、その部分を中心に脂肪が20%減少したとしています。

人間にも使える?

今回の実験はあくまでマウスが対象の話で人間でも同じようにいくかはわかりません。

同じようにいったとしても副作用が大きいければ製造が許可されない可能性もあります。

しかし、もしこれが商品かされれば「貼るだけダイエット」というのが実現されるかもしれません。
さらに、難しいといわれている部分痩せを実現できるようになる可能性もあります。

夢のある話ですが実現するとしても相当先な気がするので当面はオーソドックスな方法でなんとかするしかないように思います。

注1PPAR agonists induce a white-to-brown fat conversion through stabilization of PRDM16 protein
注2糖尿病の治療薬で脂肪細胞のPPAR受容体に結合するというもの。日本では承認されていない。