筋肉は筋線維が束なった筋束が更にまとまってできていますが、その筋繊維1本1本に速筋、遅筋といったタイプがあります。
遅筋繊維は赤筋ともいわれその名の通り赤っぽい色をした筋線維で、速筋繊維は白っぽいことから白筋とも呼ばれます。
速筋はさたに2タイプに分けられることもあり、それぞれで使われ方や特徴が違ってきます。
タイプⅠ(遅筋) | タイプⅡa(速筋) | タイプⅡb(速筋) | |
---|---|---|---|
収縮速度 | 遅 | 速 | 速 |
持久力 | 高 | 中間 | 低 |
解糖系酵素活性 | 低 | 高 | 高 |
酸化系酵素活性 | 高 | 高 | 低 |
ミトコンドリア数 | 多 | 中間 | 少 |
ミオグロビン量 | 多 | 中間 | 少 |
グリコーゲン量 | 少 | 中間 | 多 |
ウェイトトレーニングは速筋で、有酸素運動は遅筋?
人間の場合、これらの筋繊維は混在しています。
例えば上腕二頭筋の中にも遅筋繊維と速筋繊維があるということになりますが、使われるシチュエーションは違ってきます。
速筋は大きな力を発揮することができますが、長い時間力を出し続けることはできません。
これに対して遅筋はあまり大きな力は出せない代わりに長時間稼働することができます。
そのためウェイトトレーニングのような短い時間に大きな力を使うトレーニングでは速筋が使われ、ウォーキングやジョギングといった有酸素運動では遅筋が多く使われます(運動の強度が上がるほど速筋の割合が増えていくと考えてよいでしょう)。
この二つではエネルギーの供給方式も異なっています。
遅筋が赤いのはミトコンドリアとミオグロビンが多いためで、遅筋ではエネルギー代謝の際に酸素を必要とし、糖類(グルコース、グリコーゲン)と脂肪をエネルギー源とします。
これに対して速筋はエネルギー代謝に酸素を必要とせず糖類をエネルギー源とします(更に短い時間ではクレアチンを使うATP-CPシステムでもエネルギーが供給されます)。
筋トレで鍛えれば速筋は増えるのか
つまり速筋を鍛えるためにはウェイトトレーニングなどの高い負荷をかけた筋トレ、遅筋を鍛えるのには有酸素運動が有効ということになります(ちなみに遅筋繊維は速筋繊維のように筋肥大しないので遅筋を使うトレーニングでは見た目が太くなることはありません)。
では筋トレを行うことで速筋繊維の割合が増えるのかといえば、少なくても人間ではそういったことは起こらないとされています。筋繊維が太くなりはしますが数は増えないのです。
速筋と遅筋の比率は遺伝によって決定されており、残念ながらその後の努力によって変化するものではないのです(ただ動物では変化する例も確認されているそうです)。
ということは例えば短距離走の選手では速筋の割合が高く、長距離走の選手では遅筋の割合が高かったとしても、それは競技に適した筋肉を持った人が優秀な成績を出して選手として生き残ったということになります。
歳をとると遅筋が増える
歳をとると筋肉が細っていくのは極一般的な現象で、加齢による筋肉減少を指すサルコペニアという言葉もありますが、加齢によって筋線維の割合が変わるということはあるのでしょうか?
トレーニングによっても変化しなかったんだから変わるはずがないと思われるかもしれませんが、歳をとると遅筋の割合が増えていくそうです。
こういったことがなぜ起きるのかはっきりはわかっていないそうですが、神経が関係しているのではないかといわれています。
筋肉が細くなる上に遅筋の割合が増える訳ですからかなり筋力が低下することになります。
自分は速筋が多いのか遅筋が多いのか知りたいという人もいると思います。筋繊維のタイプを知るには筋生検という方法があるそうですが、筋肉を一部切り取る必要があるため病気の検査以外での実施は難しいようです。