「筋トレ」は何を意味するのか?

筋トレという言葉がなにを意味しているのかはけっこう曖昧です。

  1. 筋肉を大きくするためのトレーンング
  2. 筋力を強くするためのトレーニング
  3. 筋持久力を上げるためのトレーニング

これは全部筋トレといって問題ないと思いますが、目的によって適したトレーニング内容は違ってきます。
基本的に筋肉が大きくなれば力も強くなるので1と2はある程度は同じで、高い負荷をかけて少ない回数行うトレーニングが最適と考えられています。具体的には10回程度で限界をむかえるように負荷をかけこれを3~5セット程行うのが一般的です(2の目的では更に高い負荷で低回数のトレーニングも効果的とされます)。
筋持久力向上目的のトレーニングでは中~低負荷(最大筋力の25~50%程度)で高回数行うことが効果的とされていますが、こうしたトレーニングでは筋肥大の効果は薄くなります。
 
いずれにしても筋トレは基本的に痩せることを目的として行われるものではありません

筋トレの消費カロリー

筋トレも運動ですからもちろんエネルギーを消費します。運動でどのくらいのエネルギーを使うかは 1.05×メッツ値×時間×体重 という式で大まかに計算することができます。

メッツ値は運動の強度を表す値で「身体活動のメッツ表」によれば「スクワット(ゆっくりあるいは瞬発的な努力で)」が6.0、「様々な種類のレジスタンストレーニングを8-15回繰り返す」が3.5、「サーキットトレーニング(ほどほどの労力)」が4.3、「腕立て伏せ、腹筋運動、懸垂(きつい労力)」が8.0、となっています。

一般に筋トレの運動強度は低くないと思いますが問題は実際に運動している時間です。
筋肉を大きくすることを目的としてトレーニングする場合、1セットは10回で終わっってしまいその後に短い休憩を挟んで次のセットに行くので、例えば1時間筋トレしても実働時間はそれほど長くないはずです。

ですので筋肥大目的の筋トレで消費できるカロリーはトータルでみればジョギングなどの運動と比べると少なくなると思われます(ちなみに時速8.0kmのランニングのメッツ値は8.3とされています)。

筋トレだけでは脂肪が燃えにくい理由

筋肉繊維には遅筋繊維と速筋繊維があります。
遅筋繊維は長時間持続する運動でよく使われ、速筋繊維は短時間で大きな力を発揮する運動でよく使われます。
速筋は白っぽいので白筋、遅筋は赤っぽいので赤筋とも呼ばれます。マグロの身が赤いのは絶えず泳ぎ続くために遅筋が発達しているからで、ヒラメのような餌をとる時にだけ素早く動く魚は速筋が多いので白身となっています(ヒトの骨格筋の場合は混在しているので、腹筋の筋線維は遅筋で、胸筋は速筋みたいなことにはなりません)。
これらの筋肉ではエネルギーの使われ方も違います。

筋線維のタイプ 発揮できる力 運動の持続時間 エネルギーの供給
タイプⅠ(遅筋) 小さい 長い 酸化的リン酸化
タイプⅡa(速筋) 大きい そこそこ 酸化的リン酸化と解糖
タイプⅡb(速筋) 非常に大きい 短い 解糖

筋トレで使われるのは主にタイプⅡaとタイプⅡbで、ジョギングなどのいわゆる有酸素運動ではタイプⅠがたくさん使われます。
 
筋トレなどの無酸素運動でもジョギングなどの有酸素運動でも運動をするとホルモンが分泌されてその働きにより脂肪が分解され脂肪酸として血中に放出されますが、分解された脂肪をエネルギーとして使用するのはタイプⅠとタイプⅡa、特にミトコンドリアを多く持ったタイプⅠ(遅筋)です。
 
分解されてできた脂肪酸エネルギー源として使用されなければ再び合成されて脂肪となります。
 
つまり脂肪を燃焼させるには筋トレなどの無酸素的な運動よりも有酸素的な運動の方がよいわけです。

食事制限を行えば痩せるが筋肉はつかない

消費カロリーがそれほど増えなくても食事制限によって摂取カロリーを減らすことで痩せることは可能です。
がしかし、こうした状態では脂肪だけでなく筋肉も分解しやすくなりますので、例え筋トレを行っても筋肉量を増加させることは困難です。
体重が1kg減ったとしてもそこには脂肪だけでなく筋肉も含まれているというわけです。
ですの筋肉をつける時には十分な食事を摂って体を大きくし、減量時には多少筋肉が犠牲になるのは覚悟の上で体重を減らすというのが一般的です。
脂肪の減少量>筋肉の減少量の状態で体重を減らすことができれば、体脂肪率は下がりますので筋肉の量は減っても見た目的に筋肉質なボディを造ることはできます。

筋肉がつくことで痩せやすい体質にはなる

結局、ダイエット目的で筋トレする意味はあるの?って話しですが、筋肉がつくといいこともあります。
例えば体重80kgで体脂肪率20%の人と体重80kgで体脂肪率10%の人では体重が同じでも筋肉量が全然違います。
筋肉量が増えれば安静時代謝があがり、特に意識して体を動かさなくても筋肉の少ない人よりも多くのエネルギーを使うことができます。
つまり筋肉が多い方がそれほど意識的に運動しなくても容易に痩せることができることになります。

まとめ

  • エネルギー収支がマイナスになれば筋トレだけでも痩せるが脂肪の燃焼に必ずしも効率的ではない
  • 体重を減らしながら同時に筋肉を大きくするのは困難
  • 筋肉が大きくなれば痩せやすくなる

筋トレをするべきなのどうなのかは結局自分がどういう体型になりたいかによります。
 
ちなみに痩せるという言葉は一般的に体重が減ることという意味で使用されていますが、そうではなくて、痩せる=体脂肪率が減る、という意味としたら筋トレによって筋肉を大きくしながら痩せるということも不可能ではないかもしれません。
例えば体重が1kg増えたとき5割が筋肉、5割が脂肪なら体脂肪率は変わりませんが、7割が筋肉、3割が脂肪なら体重が増えるほど体脂肪率が下がっていきます。