筋トレをすれば脂肪が落ちると考えている人も多いと思います。
筋肉がつきなおかつ脂肪が落ちれば一石二鳥ですが、こういったことはどの程度実現可能なのかを考えてみたいと思います。
脂肪が分解される仕組み
ダイエットに運動が有効なことはよく知られています。
運動によって脂肪が分解される仕組みはこんな感じです。なにかしらの運動を行うとアドレナリン、ノルアドレナリン、成長ホルモンなどのホルモンが分泌され、その働きにより脂肪細胞内の脂質が溜まっている場所が開かれて脂肪を分解する酵素であるリパーゼと脂肪が接触する。
リパーゼは脂肪を脂肪酸とグリセリンに分解し、これによって生じた脂肪酸は血中に放出されて筋肉などの組織に運ばれていきます。
部分痩せが可能なのかについては諸説ありますが、最近では脂肪の分解を促すホルモンは筋肉が直接分泌するとさているので、例えば腹筋を動かすことでお腹周りの脂肪が分解される可能性はあります。
脂肪を燃料とする筋肉としない筋肉
ところで筋肉繊維には速筋(白筋)と遅筋(赤筋)の2種類があるのをご存知でしょうか注1
ヒトの場合、同じ部位の筋肉内に混在していますが、それぞれ使われ方や特徴は異なります。下は筋肉の断面図のつもりです(笑)。
速筋は大きな力を発揮するときに使われ、遅筋は比較的小さな力を発揮するときに使われます。特徴をまとめるとこんな感じです。
種類 | 解糖系酵素活性 | 酸化系酵素活性 | 収縮速度 | ミトコンドリア | ミオグロビン |
---|---|---|---|---|---|
遅筋 | 低 | 高 | 遅い | 多い | 多い |
速筋 | 高 | 低 | 速い | 少ない | 少ない |
遅筋が赤いのはヘモグロビンとミトコンドリアとミオグロビンが多いからです。
ミトコンドリアは好気呼吸の場であり、ミトコンドリアの多い遅筋では酸素を使ったエネルギー源代謝(酸化系)が行われますが、これに対して速筋では酸素を用いないエネルギー代謝(解糖系)が行われます。
脂肪が分解されて出てきた脂肪酸をエネルギー源とするのは酸素を使ったエネルギー代謝だけです。
酸素を使かわないエネルギー代謝ではグルコース(ブドウ糖)、グリコーゲンが主なエネルギー源となります。
つまり脂肪を燃焼させたかったら遅筋繊維をたくさん使う運動を行った方が効率的なのです。
筋トレで使われるのは主に速筋
さて筋トレですが、筋肥大を目的とした一般的な筋トレのやり方はこうです。①一回だけその動作を行うことができる負荷の75~80%の負荷をかける、②この状態でその種目の動作を10回ほど繰り返す、③一連の動作を終えたら短い休憩をいれ次のセットを始める(計3~5セット行う)。
つまり筋肉に非常に高い負荷をかけて短い時間運動するわけです。こういった場合に使われるのは主に速筋繊維です。
この画像はなんらかのデータに基づいてわけでなくテキトーですが、イメージとしてはこんな感じになります。
筋トレでも連続して数十回行うタイプのトレーニングではそれなりの脂肪燃焼が期待できるはずですが、そういったトレーニングでは筋肥大効果は低下します。
つまり一般的な筋トレは脂肪を燃焼しません。脂肪を分解するところまでは有酸素運動も筋トレも同じですが、速筋が使われる筋トレでは脂肪がエネルギー源とはなりえないので、分解で生じた脂肪酸は肝臓で中性脂肪に再合成され、一部は再び体脂肪として蓄積します。
逆に有酸素運動、中でウオーキングのようななるべくゆったりとして運動ほど脂肪燃焼させるのに適しているといえます。
ただウオーキングでは消費カロリーがとても少ないので、実際に痩せようと思えばかなり長時間行わなければならないことになります。
まとめ
まとめるとこんな感じでしょうか、
- 運動すると脂肪が分解される
- 一般的な筋トレは脂肪をエネルギー源として使わない
- 有酸素運動は脂肪をエネルギー源として使用する
ただし、筋トレによって筋肉が量が増え、それによって基礎代謝が上がって特になにもしてなくても脂肪を燃焼しやすい体質になるという可能性はあります。
安静時では脂肪がエネルギー源として使われる割合が非常に高いそうです。
また消費>摂取のエネルギーが欠乏した状態を作り出しておけば安静時の脂肪の消費が増え、合成は減りますので有酸素運動を行わなくとも脂肪を減らすことができます。
しかし、こういったやり方で体重を減らすと筋肉の減少も大きくなるといわれています。
注1正確にはタイプⅠ(遅筋)、タイプⅡa(速筋)、タイプⅡb(速筋)に分けられます。タイプⅡaは速筋なのですが、より遅筋に近い性質を持った筋線維です。