筋トレをする際、三大栄養素といわれる炭水化物、タンパク質、脂質やビタミン、ミネラルをどれくらい摂るのがよいかをまとめてみました。

タンパク質

タンパク質は英語でいえばプロテイン。タンパク質は筋肉の構成要素であり筋トレをする人がタンパク質を好むことはよく知られている。
筋タンパク質は常に合成(同化、アナボリック)と分解(異化、カタボリック)を繰り返しているが、トータルでみて合成が上回ると筋肉量が増加する。

必要量

厚生労働省によると年齢、性別毎のタンパク質必要摂取量及び推奨摂取量は以下のようになっている。

(推定平均必要量、推奨量、目安量:g/日、目標量(中央値):%エネルギー)
年齢、性別毎のタンパク質推定平均必要量、目安量、推奨量
日本人の食事摂取基準2015年版より)

この表の18歳から29歳男性の必要量、推奨量を参照体重63.2kgで割ると1kg当たり0.79~0.93gということになるが、瞬発系のスポーツやウェイトトレーニングを行っている場合は1.4~2g/体重/日摂るのがよいとされることが多い。
だだし体重当たり2g以上タンパク質を摂っても筋肉の合成は高まないとされている注1
タンパク質は太らないというイメージを持たれることがあるが使い道のないタンパク質は脂肪に変換され蓄積するので過剰摂取は肥満の原因となり、腎臓への負担も大きくなるので摂り過ぎない方がいいだろう。
またタンパク質が効率よく筋肉に使われるためには炭水化物などでエネルギー供給が満たされている必要がある。

食品中の含有量とタンパク質の「質」

タンパク質は肉や魚に多く含まれている。いくつかの食品について食品成分データベースでタンパク質が含有量を調べてみた(100g当たり)。

食品 エネルギー タンパク質含有量
ささみ(若鳥/茹で) 125kcal 27.3g
牛肉(もも/脂肪なし/茹で) 328kcal 25.7g
木綿豆腐 72kcal 6.6g
サバ缶(水煮) 190kcal 20.9g
ツナ缶(水煮) 71kcal 16.0g
ちくわ 121kcal 12.2g
ビーフジャーキー 315kcal 54.8g
にぼし(イカナゴ) 245kcal 43.1g
卵(生) 151kcal 12.3g
牛乳 67kcal 3.3g
チーズ(ゴーダ) 380kcal 25.8g
きなこ 450kcal 36.7g
納豆 200kcal 16.5g
バナナ 86kcal 1.1g
ゼラチン(豚由来) 344kcal 87.6g
ふかひれ 342kcal 83.9g

低カロリーでタンパク質の豊富な鶏のささみは筋トレをしている人に特に人気が高い。

ところで各食品から摂れるタンパク質が全て同質というわけではない。
タンパク質は20種類のアミノ酸が繋がって出来ているが、食品によって各アミノ酸の含有量が違う。
リシン、トリプトファン、ロイシン、イソロイシン、バリンなど9種類は体内で作り出すことのできない必須アミノ酸となっており、特に重要だが、植物由来のタンパク質は一部の必須アミノ酸が必要量に達していない場合がある。
なので植物からタンパク質を摂る場合は複数の食品から摂ることが望ましい。ただし大豆のアミノ酸スコアは100であり、大豆のタンパク質は肉や魚と同等の質を持つ(肉から摂れるタンパク質と魚から摂れるタンパク質に差はない)。

最適な摂取のタイミング

タンパク質は一度(1回の食事)に大量に摂取しても筋肉の合成に使われるの20g程度までとされている注2
なのでタンパク質は1度にたくさん摂るよりも小分けにして摂取した方がよいと思われる。
摂取のタイミングとしては運動後が特に重要と考えられており、数時間後に摂取するより運動直後に摂取した場合の方が筋肉の合成が高まるとされる注3
運動後すぐに食事を摂るのはなかなか困難な場合が多いと思うのでそういった時にはプロテインサプリメントを使うのもよいかもしれない。
また就寝直前にタンパク質を摂るも寝ている間に分泌が多くなる成長ホルモンの働きで合成が増えるのでよいとされることがある。

プロテインサプリメントとは?
牛乳(ホエイプロテイン)、大豆(ソイプロテイン)などから抽出したタンパク質を含んだ粉末状のサプリメント。単にプロテインと呼ばれる場合が多く、水、牛乳、豆乳などで溶いて飲む。一般的な商品はタンパク質以外にも炭水化物やビタミン類を含んでいる。→人気のプロテイン

エネルギー源としてのタンパク質

タンパク質はペプチド、アミノ酸と分解されて吸収され、タンパク質に再合成されて筋肉となったり、各種酵素やホルモンの材料となるもので、運動中のエネルギー源としはさほど重要ではない。
しかし、血中のグルコース(ブドウ糖)やグルコースの貯蔵態である筋肉中のグリコーゲンが不足した状態で運動すると筋タンパクが分解されてアミノ酸からグルコースが作られる(糖新生)。
これはつまり筋肉が減っていくということであるので、筋トレには炭水化物の摂取も重要であることがわかる。
減量中は特にこのような現象が起こりやすいので、糖新生を起こさせないために抗カタボリック効果があるとされるBCAA(分枝鎖アミノ酸)などのサプリメントを飲むのも手である。

炭水化物(糖質)

炭水化物は糖質とも呼ばれ、糖類や食物繊維からなる有機化合物の総称である。
食品中の糖類は単糖、オリゴ糖(少糖)、多糖に分類されるが、オリゴ糖や多糖類は単糖に分解されてから吸収される。
エネルギー源として重要で、筋トレをする場合には十分な量を摂取することが筋肉の発展のためにも望ましい。甘い物や米やパンなど主食とされるものに多い。

必要摂取量

厚生労働省によると男性女性ともにエネルギーの50~65%を炭水化物で摂取することが望ましいとされている注4
エネルギーの50-60%を炭水化物で摂取するとして、推定エネルギー必要量を満たす炭水化物の量を計算すると以下のようになる。

男性の場合

年齢 活動レベル1 活動レベル2 活動レベル3
15-17歳 313-406g 356-463g 394-512g
18-29歳 288-374g 331-431g 381-496g
30-49歳 288-374g 331-430g 381-496g
50-69歳 263-341g 306-398g 350-455g
70歳以上 231-301g 275-358g 313-406g

女性の場合

年齢 活動レベル1 活動レベル2 活動レベル3
15-17歳 265-333g 288-374g 319-414g
18-29歳 206-268g 244-317g 275-358g
30-49歳 219-284g 250-325g 288-374g
50-69歳 206-268g 238-309g 275-358g
70歳以上 188-244g 219-284g 288-374g

炭水化物の摂取量を抑えると筋肉の成長に悪影響なので筋トレをしている場合もカロリーの60%程度は炭水化物で摂った方がいいだろう。
筋トレに炭水化物は不要と思っている人がいるがこれは大きな間違いであり、減量する場合も糖質制限ダイエットのように炭水化物だけを大きく制限する方法はおすすめできない。
もちろんだからといって必要のない量食べれば脂肪として蓄積し太るだけなので注意しよう。

食品中の含有量

いくつから食品について100g当たりの炭水化物の量を食品成分データベースで調べてみた。

食品 エネルギー 炭水化物含有量
白米 71kcal 15.7g
食パン 264kcal 46.7g
生パスタ 247kcal 46.9g
うどん(茹で) 105kcal 21.6g
そば(茹で) 132kcal 26.0g
バナナ 86kcal 22.5g
リンゴ(皮付) 61kcal 16.2g
あんぱん 280kcal 50.2g
みたらしだんご 197kcal 45.2g
コーラ 46kcal 11.4g

甘い炭酸飲料やお菓子類ばかり食べていると過剰摂取になり太る可能性がある。

運動時の利用と摂取のタイミング

炭水化物は体内に取り込まれ、分解、吸収されると多くはグルコース(ブドウ糖)になり、これが筋肉などに蓄えられたものがグリコーゲンである。
グリコーゲンの消費量は運動の種類によって異なり、基本的に大きな力を発揮する(速筋を多く使う)運動程多い。なので筋トレ中のエネルギー源としてグリコーゲンは重要だと考えられる。
グリコーゲンのが不足した状態で筋トレを行うと新たにグルコースを作るために筋肉が分解される可能性があるので、トレーニングの3~4時間前には炭水化物を摂取しておくことが望ましいとされる。
また筋トレ後にはトレーニングによって失われたグリコーゲンを回復させるために炭水化物を摂取する必要がある。
運動後の摂取はできるだけ早い方が効果的とされ、炭水化物の摂取によって分泌されるインスリンはグリコーゲンの合成を高めるとともに筋肉の合成も高めるため、タンパク質と同時に摂取するのがよいと思われる注5
また運動が長時間に及ぶ場合や連日ハードなトレーニングを行っている場合には運動中に炭水化物を摂取するのも有効とされている。

カーボローディング
試合などに備えて筋肉中のグリコーゲン量を増やすことをカーボローディング(グリコーゲンローディング)といい、炭水化物を一度節制したから大量に摂取するなどの方法でこれが実現できるとされます。詳しくはこちらを参照。

脂質

脂質は水に溶けず、有機溶媒に溶ける有機化合物の総称である。
最も太る原因となる栄養素と考えられており嫌われものだが、エネルギー源としては優秀で、タンパク質や炭水化物が1gで4kcalなのに対して脂質は1gで9kcalのエネルギーを生産する。
また臓器の保護や体温の保持に役立ちステロイドホルモンの材料となり、ビタミンの吸収にも必要ため、減量中でも一定の量は確保しておく必要がある。
特にリノール酸、リノレン酸、アラキドン酸は体内でつくることのできない必須脂肪酸となっているので、食品からの摂取が大切である。

必要摂取量

厚生労働省によると成人男女では全エネルギーの20~30%を脂肪分(脂質)から摂取することが望ましいとされている。
また、飽和脂肪酸は7%以下に抑え、n-6系脂肪酸(リノール酸、アラキドン酸など)を10g前後、n-3系脂肪酸(リノレン酸 、DHA、EPA)を2g前後摂るのことが推奨されている。
筋トレを行っている場合も15%を大きく下回るほど脂質をカットしない方がよいと考えられる。

食品中の含有量

脂質が多く含まれているのはいわゆる脂身です。いくつかの食品について調べてみました。

食品 エネルギー 脂質含有量
マグロ(脂身) 352kcal 28.3g
牛(リブロース脂身生) 752kcal 78g
豚(肩脂身生) 704kcal 72.4g
ミルクチョコレート 558kcal 34.1g
天ぷら(ナス) 180kcal 14.0g
アーモンド(乾) 587kcal 51.8g
ソーセージ(豚) 321kcal 28.5g

運動中の脂質利用

血中の中性脂肪や体に蓄積されている体脂肪は運動中のエネルギー源となりうる。
運動を行うとアドレナリンやリパーゼの作用で脂肪が分解して脂肪酸として血中に放出され、遊離脂肪酸は筋細胞に取り込まれるエネルギー源として消費される。
しかし、強度の高い運動ではグリコーゲンが先に使われ、脂肪はあまり利用されない。そのため一般的な筋力トレーニングでは脂肪の燃焼効果は薄い。
逆にジョギングなどの有酸素運動では脂肪がエネルギー源としてよく利用される。

ビタミン

ビタミンはエネルギー源になりことはなく、体の構成要素にもならないが、様々な代謝活動に関わるので重要である。
ビタミンには水溶性のもの(ビタミンB群、ビタミンC)と脂溶性ビタミンのもの(ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK)があるが水溶性ビタミンは過剰になりにくい代わりに欠乏しやすく、脂溶性ビタミンは欠乏しにくい代わりに過剰になりやすい。青年男性での必要量または目安量は以下の通り。

ビタミン 成人男性の推奨または目安摂取量
ビタミンE 6.5mg
ビタミンB1 1.4mg
ビタミンB2 1.6mg
ナイアシン 15mg
ビタミンB6 1.4mg
パントテン酸 5mg
ビタミンC 100mg
ビタミンA 60μg
ビタミンD 5.5μg
ビタミンK 150μg
ビタミンB12 2.4μg
葉酸 240μg
ビオチン 50μg

野菜、肉・魚、主食、果物とバランスのよく食事を心がけていれば全てのビタミンを必要量摂れるはずだが、ビタミンB1は比較的欠乏しやすいといわれる。またベジタリアンではビタミンB12がとりにくとされる。
減量中などで食事から十分な量摂取できそうにない時はサプリメントが有効だが、過剰摂取すると副作用を起こすものもあるので摂り過ぎないよう注意する。
ただし筋トレによって常人よりも体が大きくなっている場合はビタミン類も多少多めに摂取してよい。

ミネラル

ミネラルもビタミンと同じくエネルギー源にとなることはないが様々な反応に関わる。
必要量は非常に微量だが体の中で作り出すことはできないので食品から摂取する必要がある。主なミネラルの18歳から27歳男性推奨摂取量は以下の通り。

ミネラル 成人男性の目安・必要・目標摂取量
ナトリウム 600mg
カリウム 3000mg
カルシウム 800mg
マグネシウム 340mg
リン 1000mg
7.0mg
亜鉛 10mg
0.9mg
マンガン 4.0mg
ヨウ素 130μg
セレン 30μg
クロム 10μg
モリブデン 25μg

筋トレ関連ではタンパク質の合成に関わる亜鉛、マグネシウムや筋肉の活動に関与するカリウムなどに関心が高く、サプリメントを飲んでいる人もいる。

必要なエネルギー量と食事法

日本人の食事摂取基準では推定必要エネルギー量は以下のようになっている(単位はキロカロリー)。
年齢、性別、活動レベル別推定必要エネルギー量
これはあくまで標準的な体型の人での目安なので筋肉がついて体が大きくなってくればより多量のカロリー摂取が必要となってくると考えられる。
エネルギー消費は安静時代謝、食事誘発熱、身体活動からなり、これと摂取エネルギーが釣り合えば体重は変わらず、消費>摂取になれば体重は減少し、摂取>消費にすれば体重は増加する。
筋肉を増やしたい時には摂取>消費の状態にする必要があるが、摂取は増やしすぎると余計な脂肪が増えるので自分で様子を見ながら食事量をコントロールする。
逆に減量したいときは消費>摂取にするが、この時は脂肪だけでなく筋肉も減少することが多く、少なくとも筋肉量の大きな増加は望めない。
食事は1度に沢山摂るよりも朝昼番バランスよく摂った方が消化、吸収がよく余計な脂肪の蓄積を招きにくい。
実現が難しい場合も多いと思うが、ボディービルダーなどでは1日5~6食に分けて摂取する人が多い。

まとめ

体重当たり1.4~2gのタンパク質で摂り、エネルギー必要量の50~65%を炭水化物、15~20%を脂質摂る。
またビタミン、ミネラルも推奨量かそれよりやや多い量を摂取するよう心がける。

例えば体重70kgで1日3000kcal必要だとしてタンパク質を2g摂るとすると、タンパク質は1g4kcalなので140gで560kcalとなり全体の18.7%を占めるので、残り60%弱を炭水化物、20%を脂質で摂るとよいだろう。
炭水化物・脂質・タンパク質のバランス
減量時もどれかひとつの栄養素を大きく減らすのではなくバランスよくカロリーを抑えた方が筋肉の維持にはよいと思われる。

注1Evaluation of protein requirements for trained strength athletes.
注2Ingested protein dose response of muscle and albumin protein synthesis after resistance exercise in young men.
注3Postexercise nutrient intake timing in humans is critical to recovery of leg glucose and protein homeostasis.
注4日本人の食事摂取基準(2015年版)
注5運動後の栄養補給法に関する最近の知見