痩身、ダイエットに有効とされているサプリメントは多数あります。
しかし、サプリは本来効果、効能を謳うことができないものであり、実際にどの程度有効なのかは不明なものがほとんどです。
では、医者で処方されるような薬で肥満解消に効果的なものはないのでしょうか?
といったことが気になったので少し調べてみました。
肥満症と診断され薬物治療が受けられる基準
肥満で医者にかかるためにはまず治療が必要なレベルで太ってると診断される必要があります。日本肥満学会の肥満症診療ガイドライン2016によると肥満の基準はこうです。
BMI注1 | 体重判断 |
---|---|
18.5以下 | 低体重 |
18.5~25 | 標準体重 |
25~30 | 肥満(1度) |
30~35 | 肥満(2度) |
35~40 | 肥満(3度) |
40以上 | 肥満(4度) |
つまりBMI25以上が肥満です。身長170cmなら72.25kg以上、身長160cmなら64kg以上ということになります(BMI35以上はさらに高度肥満と位置付けられているようです)。
ただこれだけでは肥満症とは判断されません。BMI25以上に加え以下のどちらかの条件が必要です。
- 肥満に起因ないし関連し,減量を要する(減量により改善する,または進展が防止される)健康障害を有するもの
- 健康障害を伴いやすい高リスク肥満ウエスト周囲長のスクリーニングにより内臓脂肪蓄積を疑われ,腹部CT検査によって確定診断された内臓脂肪型肥満
ここでいう健康障害は①耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)、②脂質異常症、③高血圧、④高尿酸血症・痛風、⑤冠動脈疾患:心筋梗塞・狭心症、⑥脳梗塞:脳血栓症・一過性脳虚血発作(TIA)、⑦非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、⑧月経異常・不妊、⑨閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)・肥満低換気症候群、⑩運動器疾患:変形性関節症(膝・股関節)・変形性脊椎症,手指の変形性関節症⑪肥満関連腎臓病を指します。
以上を満たしていると医者が判断すれば治療を受けられることになりますが、すぐに薬物療法が受けられるわけではありません。
薬は副作用などのリスクも大きいためまずは食事療法、運動療法が行われ、それでも改善が見られない場合に薬物治療が検討されます。
唯一の保険適用薬 マジンドール
では実際に薬物治療が必要だと判断された場合どのような薬が処方されるのでしょうか。
実は日本で製造が許可されている肥満治療薬は2種類しかないそうで、保険が適用されるのはこのマジンドール(商品名サノレックス注2)だけです。
マジンドールには摂食行動を調節する視床下部に作用して摂食中枢を抑制することにより食欲を抑える効果があります。
ただし、処方されるのは基本的にBMI35以上で食事、運動療法の効果が出なった高度肥満症患者だけであり、依存症があるとされることから連続して使用できるのは3ヶ月までと決められています注3。
期待の新薬 セチリスタット
セチリスタットは膵臓から分泌されるリパーゼを阻害する薬で、体内に取り込まれた脂質が分解されるのを防ぎ、未消化のまま排出させることで体に脂肪が蓄積されるのを防ぎます。つまり食べても吸収されないから太らなくなるってことですね。
日本では2013年に製造が認可されて武田からオブリーンとい商品名で販売されています注4が、現在までのところ保険は適用されないようです。
海外では使われている薬
日本では許可されていなくてもアメリカやヨーロッパでは使用されている肥満治療薬もあるようです。
オルリスタット
オルリスタットはチリスタットと似たような働きをする薬で、やはり脂肪の吸収を阻害することで肥満を解消します。
グラクソ・スミスクラインからAlli、ロシュからゼニカルという商品名で販売されており、アメリカなどでは使用されていますが、日本での製造は許可されていません。
個人輸入等で購入することは不可能ではありませんが危険性が大きいのでやめた方がよいでしょう。
シブトラミン
シブトラミンはセロトニンとノルアドレナリンの取り込みを阻害する作用を持つ薬で、アメリカではメリディアの名前で販売されていましたが、副作用のリスクが大きくシブトラミン摂取が原因とみられる死亡例もあり、現在では多くの国で販売禁止となっているようです。
シブトラミン、マジンドール、甲状腺ホルモンなどが含まれたダイエット食品、サプリメントが出回り問題になったこともあるので注意が必要です注5。
市販の肥満対策薬
処方薬ほど効き目は強くないと思われますが、ドラッグストアやネット通販でも買える肥満対策薬も存在します。代表的なものを列挙してみました。
- ナイシトール 小林製薬 (第二類医薬品)
- コッコアポ クラシエ薬品 (第二類医薬品)
- アンラビリ 阪本漢法製薬 (第二類医薬品)
- ツムラ漢方防風通聖散エキス顆粒 ツムラ (第二類医薬品)
- ロート防已黄耆湯錠 ロート製薬 (第二類医薬品)
- ボーツーンN「コタロー」 小太郎漢方製薬 (第二類医薬品)
- ココスリム 佐藤製薬 (第二類医薬品)
第二類医薬品というのは比較的リスクが少なく説明を受けなくても買える薬のことなので、これらの薬はドラッグストア等で簡単に購入することができます。
まとめ
まとめるとこんな感じです。
- 肥満治療に使われてる薬は存在する
- 薬が処方されるためにはかなり重度の肥満で健康を害してる必要がある
- 日本で使われてるのはマジンドールとセチリスタット2種類だけ
- 海外では他の薬も使われている
- 肥満に何かしらの効果があるとされる市販薬も存在する
薬の効き目には個人差が大きいようですし、副作用なども怖いのでやはり基本は食事制限や運動で痩せることを目指すべきなのではないかと思います。
マジンドールなどの食用を抑える系の薬はやめるとすぐに食べる量が増えリバウンドしてしまうことが多いと聞きます。
注1体重(kg) ÷ (身長(m)× 身長(m))で求めることができます。ただBMIは身長に対して体重がどの程度かをみる指標なので、筋肉が多く体脂肪率が低ければBMI的に肥満でも肥満とは言い難い体型な可能性もあります。
注2食欲抑制剤サノレックス錠0.5mg 富士フイルムファーマ株式会社
注3サノレックス適正使用ガイド
注4肥満症治療剤「オブリーン®錠120mg」の日本における製造販売承認取得について
注5いわゆる健康食品の薬事法違反事例について